キミの螺旋
何でだよ?

      何で?

   何…で?


悲しい感情がわからない代わりに、『何故?』っていう疑問で頭の中がいっぱいだった。

そして明け方まで陽菜と一緒にいて…

ふと、オレは聞いてしまった。

『昨日の聞いた?』

『急患が二人同時に来たって話しでしょ?』

『それそれ!だっておかしくない?【アリマ】さんの方はまだ少し余裕だったでしょ?』

『なのに【アリマ】さんの方、優先してもう一人の女の子ほったらかしにしてたらしいじゃん?』

『ちょっとヤバくない?いくらあの【アリマ】さんだからって…確かに場合によっては赤ちゃんも危なかったらしいけど…』

『それにね、父親が政治家でしょ?昨日も'頼む'って連絡があったらしいよ』

看護師らしい二人が話しながら歩いていたのを聞いてたんだ。

オレはすぐに陽菜の事だと思った。

あの時、隣の部屋では赤ん坊の泣き声が聞こえてきたのを覚えてる。


  【アリマ】

オレはその名前を覚えていた。

そして
【チチオヤハセイジカ】

って事も。

詳しい事も意味もわかんない。

だけど

そいつらのせいで陽菜が死んだって事だけはわかったんだ。
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