キミの螺旋
「バタン、ガタン」

誰かが来た…
平田先生にしては様子がおかしい気がして、あたしは息を殺した。

物音が近づいてくる…

ここで、あたしは捕まるんだろうか…

それでも、いいや

部屋のドアが開く。

完全に諦めた時、奇跡が起こった気がした。






どうして…?




いつも、助けに来てくれるね。

今回は少し遅かったかな?

でも、いいの。自分の手で総てを終らせたんだから。

──何かが変わるわけじゃない。
だけど奇跡が起きたように思えるの。




もう逢えないと思ってた。


もう一生逢えないと思ってた…



不思議だね。

あたしの心の奥に
宝物のように閉じ込めてあった恋心を少し拾いあげただけで

貴方を目の前にして貴方に対する気持ちが前と違う気がするよ。

あたしも人を殺したから?

ううん、違う…
あたし、まだ恋していたのかも・ね


涙が出る──



「…っ…藤紀…」

「凛…!」

藤紀はすぐにあたしを抱きしめた。

義父の血で真っ赤になっていたあたしを。

「凛…大丈夫か?!怪我は?」

「…藤紀…藤紀…っ」

藤紀は周りを見渡し、静かに言った。


「お前が…殺したのか…?」
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