キミの螺旋
あたしはハルトに出会った事や、あたし達の付き合い方とかを
平田先生に素直に話した。

「そっか…凛ちゃんにとって誰かを愛するって事は治療にもなるかもしれないね」

「わかんないけど…最近は悪い夢も見なくなってきたの。前はあんなに見ていたのに、コレって効果として現れてるっていう事?」

「関係はあると思うよ?」

「だけどね…あたし自分の事は彼に話せないの。記憶喪失の事とか…家の事とか」

あたしの発した言葉を先生はカルテ(?)に書き込み、少し考えながら答えた。

「それはムリして話す事もないんじゃないかな…どうしても彼が知りたがるなら僕の所に連れてくるといいよ」

「…うん。わかった」

少し…安心した。
やっぱり心のどこかでプレッシャーを感じていたのかもしれない。

「でね、この前の催眠療法をまた試してみたいの。気分も落ち着いてるし…何かまた思い出せそうな気がする」

「いいよ。また早速始めようか」

そう言って先生は長椅子にまたあたしを誘導した。

前回のように先生の言葉に誘導されて……


─…墜ちていく





短く
懐かしい夢を見るハズだったのに…




その日

何かを思い出す事はなかった。
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