オフィス・ムーン
遥は、何で話してしまっ
たのか 後悔していた。

「今日、
弟になるよ。だけど、

今夜だけだよ」

「え?」

「弟に言いたい事、言っ
てみて。泣いても、怒っ

てもいいよ。今日は弟に

なって遥さんの気持ち全

部聞くから」

「ば、馬鹿な事 言わな

いでよ そんなの無理に決
まってるでしょ」

「僕は、遥が好きだよ。
だから遥のためになら弟

にだってなれるさ」

「無理に決まってる」

「僕の名前は?」

「え?…名前?」

「…天国に行ってから、
ずいぶん時間が経ったか

ら ここでの名前忘れてし
まったんだ。」

有森は、真剣な顔で言っ

た。

「優…」
「…僕は、優、僕は、お
姉ちゃんの事をなんて呼

んでたっけ?」

「ねぇちゃんって…」

二人は、タクシーに乗り
有森の部屋に行った。

有森は、ホントに弟が

乗り移ったかのように

なっていた。
< 57 / 103 >

この作品をシェア

pagetop