オフィス・ムーン
「信じていいのね?」
「当たり前だろ」
「彩、美人だから、ほんとは下心とかあったんじゃないの」
「ばか。」
「ばかって何よ」
「遥がいいから、付き合ってるんだろ。何で信じないのさ」
「好き過ぎて、失うのが怖いの」
「…信じてよ。」

遥と有森は仲直りした。雨降って地固まる

遥は有森に愛されて居る事を本当の意味で解ってきた。そして遥も有森を愛した。

 遥は、あの夏、弟を亡くした日、悲しみの余り母が言ってしまった一言…『なんで、手を話したの!』この一言でずっと自分を責めていたし、弟の方が自分より両親に愛されていて、死んだのが弟じゃなくて自分だったらよかったと長い間思い、両親と距離を置いてきた。だから、いつも人に愛される自信が無くて、言いたい事もいつも我慢して人に合わせる事で嫌われないで済むと思ってきた。前の恋愛の時に一樹が浮気してる事に気付いててもずっと黙っていた。本当は辛かったし、怒りや淋しさ、ぶっける事も出来ずに終わって行った…
…だから有森に即座に怒りをぶつける事が出来たのは大きな進歩だった。遥は、確実に有森との出会いで変わってきていた。
 そして遥自身もそれに気付いていた。

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