魔法使いの巫女少女Ⅰ
翡翠と呼ばれた少年は扉の前で深呼吸をひとつした。
そして緊張した様子で扉を開けた。
「失礼します、王よ。」
『早くここに来い!』
そう言うと椅子がひとつあらわれた。
翡翠はその椅子に座り、前をみた。
前にあるのは、テレビ画面が数十あるだけだ。
(大丈夫…大丈夫…)
『翡翠』
「はい…」
『何故あの娘を連れてこなかった?』
「まだ完全な状態ではなかったため…」
『それでいいのだ!』
「えっ…?」
『不完全な状態で良かったのだ!
その方が扱いやすかったものを…!』
「申し訳ありません。」
『謝ってすむと思うな!』
「我らが王よ…。ひとつお聞きしても?」
『なんだ?いいわけは聞かんぞ!』
「どうして不完全な状態が良いのですか?」
『なんだ、そんなことか。』
王はため息をはいて答えた。
『あの娘は完全な状態の場合、強力な結界で身を守る。
だが、不完全な状態の場合、結界を作ることはない。』
「つまり、結界を作られる前に手に入れたかったと?」
『当たり前だ。』
「……そこまでして手に入れたかったのか?」
翡翠はそう言って内心舌打ちをした。
案の定、不機嫌そうな声が響いた。
『なに?』
だが、翡翠は止めることの出来ない感情をぶつけた。
「あんたたちはそうやってあいつを手に入れて操るつもりだったのか?」
『当たり前だ。あれは人ではなく道具にすぎない。』
「……そうやってあいつを汚すつもりか?
ようやく、笑えるようになったあいつを壊すつもりか?
また、あいつの居場所を無くすつもりか?」
『その通りさ。そのために鳥籠も造った。』
「…ふざけるなよ……!」
『ふざけるなだと?』
「あいつのために俺はこっちについたんだ!
それなのにあいつを道具と言って閉じ込めるだと?
そんなこと俺は許さない…!」
翡翠は力の限りを開放した。
それを嘲笑うかのように声が響いた。
『翡翠……いや、本名は洸だったか?。』
「そうだが?」
『もうお前は必要ない。』
「そうか。じゃあ、ひとつ言わせてもらおうか。」
『なんだ?』
「絶対にあの娘は渡さない……!」
クックッと笑って声は消えた。
洸は声が消えたのを確認して空間跳躍をした。
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