魔法使いの巫女少女Ⅰ
「未来を外に?」
「ええ、最近部屋に閉じ籠ってばかりいるので、気晴らしにどうかと…。」
アーサーの報告を受けた両陛下は、顔を見合わせて首をふった。
答えはNOの合図だった。
アーサーはそれでも食いついた。
「しかし、このままで良いのですか?」
「アーサー、気持ちはわかりますが…」
「姫様はこのままでは来るべきときまでもちません。」
「わかっています。」
「でしたら、なぜですか?」
「アーサーよ。」
陛下は静かに答えた。
「いま出せばあの娘はまた出ていく。
  もう少しなのだ、もう少し待ってくれ。」
しかし、アーサーは悲しそうな顔をして言った。
「陛下、無礼を承知で申し上げます。」
深呼吸をして慎重に答えた。
「私が姫様に外出を申し上げたとき、いつも乾いた瞳で見送られます。
  私が見ていないところで泣いておられます。
  確かにまだ時は参りません。
  しかし、時が来る前に姫様は壊れてしまいます。
  そうならないためにも、許可をください。」
そう言うとアーサーは頭を下げた。
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