魔法使いの巫女少女Ⅰ
「もう少し、遊びたかったな。」
誰に言うでもなく、そう呟いた。
次は、もっと早く家を出よう。
そうすればきっと……。
「姫様?いらっしゃいますか。」
急にドアの向こうから声がかかり、驚いた。
だが、声に驚いた様子が出ないよう落ち着いて返答をした。
「どうかしたの?」
「陛下がお呼びです。急ぎ地下倉庫に来るようにと。」
「分かった。着替えてから行くと伝えておいて。」
「分かりました。」
足音が遠くなったのを確認して、未来は入院着に着替えた。
また、記憶は消される………けれど、未来は引き出しを開けていった。
「本当に大事なものは、消すことはできないよ。お父様、いえ、両陛下。」
大事そうに本を抱きしめて、瞳を閉じた。
今の私にない記憶。でも、ちゃんと綴ってあるから平気。
そう、自身に言い聞かせて本を引き出しに入れてしっかりと閉めた。
それから、未来は部屋を出て地下へ急いだ。

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