魔法使いの巫女少女Ⅰ
未来は慎が魔力欠乏症になるのではないかとハラハラした。
しかし、未来が中から開ければ慎に隠してたことがばれてしまう。
未来が犯してしまった過去を慎は受け止められるだろうかー?
(いいえ、絶対に無理。)
未来は自身が犯した過去の重さを知ってしまった。
故に慎のような他人のために命を懸けられるものには酷なことだと思った。
それでも慎を助けたかった。
未来が中から魔法を使えば慎は助かるだろう。
だが、未来自身は出ることができないため、慎はまた魔法を使うだろう。
どうすればいいのか、考えていた時―、ミシッと音が聞こえた。
何の音かと顔を上げたとき、小さなでも確かなひびが壁に入っていた。
それをみて、未来は驚いた。
(今までの慎だったら、こんなことができなかったはずなのに…。)
なにがそこまで慎に力を与えているのだろう。
なにがそこまであなたを支えているのだろう。
私なんかより、ずっと力も才能もなかったのに…。
どうしたらあなたみたいにまっすぐ強くなれるのだろう…。
未来にはわからなかった。
そんな未来の考えなんて知るはずもない慎は喜んでいた。
「よしっ!もう少しで壊れそうだ!」
そういきこんで慎は魔力を注いだ。
「……めて…、やめて、慎!」
未来は慎が異常に魔力を使っていることに気づいていった。
「うるさいなっ!今集中してるんだ!話しかけるなよ!」
慎は興奮したように怒鳴り声をあげた。
それでも未来はやめるように言った。
「そんなに魔力を使ったら、魔力欠乏症になっちゃう!私のことは放っておいて!」
「うるさいっ!」
慎は未来の言葉を無視した。
(わかってるさ、そんなこと!でも、ここでやめたらー)
「ここでやめたら一生後悔する!君が今まで何を隠して何に苦しんできたか知らない!でも、ここで引いたらこの先君と笑える未来がなくなってしまうかもしれないだろっ!だったら今、命を懸けなくてどうすんだ!」
そういってありったけの魔力を注いだ。
すると壁がパキンッと音を立てて割れた。
それと同時に慎は倒れた。
「慎っ!」
未来が慌てて駆け寄ってくるのが見えた。
それを見て慎は意識を失った。
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