生存税
まだ、家具も何もない真っ白な部屋の一室に重ねられている段ボール。
その数ある段ボールの中から一番重い段ボールを運び出した。
ガムテープを無造作に引きはがし、その中に入っている自分の漫画を取り出す。
全12話完結のサバイバル漫画。
主人公が次々に訪れる試練を仲間と乗り越えていくという一般的なストーリーだ。
「なんで、こんなのが売れたんだか。」
元々絵を書くのは好きで、高校の時は美術部に所属していた。
その時一緒に絵を書いていた友人に勧められて、漫画を描いてみて、軽い気持ちで出版社が開催している漫画大賞に応募してみたら、こんな状況だ。
まさか、その時は自分が漫画家になって田舎に引っ越すなんて想像もしていなかった大賞を取った時だって、賞金貰って文庫化して...そこまでだと思ってたし。
そしたら、次回作だの編集社だの色々な事が関わってきて。
ここまで休みなく一つ一つ仕事を終わらせてきたけど、もうさすがに疲れて。
都会は、落ち着かなくて、最新作をとりあえず書き終えて田舎に越してきたわけだ。
まだこの自然豊かな田舎なら、都会よりはゆったり次回作を描けるはず。
隼は、少しの希望と期待に胸を弾ませていた。
この時までは。