歪んだ庭
人の国02
小さい頃に絵本を読んだことは覚えているの。でもその絵本の題名や内容は何も覚えていないわ。ただ楽しかった記憶だけが残っているんだけどね、それ以上のことを思い出そうとすればするほど絵本の存在は遠ざかっていくの。私が街へ近付いていくのは新しい冒険。過去の自分がいた場所へ戻る冒険なの。でも、賑やかな街をみていると、過去の自分がいた場所の記憶が薄れていく気がして、ちょっと怖くなっちゃった。このまま街に居着いてしまうんじゃないかとか、それはそれでいいのかもしれないけどね。
私が街へ入ろうとすると、二人の門番が手に持った剣を交差させて道を塞いだの。
「ぎゃぁぁぁぁ!」
交差させた剣がそのままお互いの顔に刺さって、二人とも死んでしまったわ。あら大変、どうしましょう。
そこへ四人の兵士が鎧をガチャガチャ鳴らしながら走ってきたの。二人の兵士と四人の兵士で、合計六人の兵士になったわ。
「何事だ!うわ!死んでる!誰がやったのだ!」
「兵士さん、この二人はお互いに顔を刺し合ったの。事故だわ。」
兵士さんたちは私の方を見た。
「貴様は誰だ!さては霧の森からきた魔女だな!」
「いいえ、違うわ。私はただの迷子なの。」
「嘘だね!魔術を使ってこの二人に殺し合いをさせたんだ!そうに違いない!」
私は両腕を大きな手で抑えられて、今にも泣き出しそうだわ。だってこんなの理不尽だと思うの。
「殺人の罪で死刑だ!牢屋へぶち込め!」
私は兵士四人に腕を掴まれて、街の中を引きずられていくの。街の人達が不思議そうな顔をしていたわ。すごく恥ずかしくて、怖くて、どうすることもできなかったの。だから黙って大人しく引きずられていくと、街の中心にある三角形で銀色の建物の中に連れ込まれたの。とても大きな建物だったわ。
中はとても不思議で、銀色に輝く床や壁、そして四角い箱がたくさん浮かんでいたの。こっちの方が魔術じゃない。
「女王さま!門番を魔術で殺した魔女を捕らえました!どうなさいますか!」
肌も髪も何もかも銀色の女王様が、銀色の浮かぶ椅子に座っているの。まるで鉄で作られた人形のようね。生きてるのかしら。
「魔女よ。ようこそ我が国へ。私はこの名も無き国の女王、もちろん私にも名前がないから女王様と呼ぶのだぞ。」
「ふええ。」
「魔女よ。お前は本当に魔女なのか?兵士を殺したのか?」
「いいえ、殺してないわ。あの二人が剣を交差させて勝手に死んだの。」
「なるほど、ん、ちょっと失礼するぞ。」
ドカーン!
女王様のおしりから赤い光が出て、壁を爆破したの。私は怖くて石像みたいに固まっちゃって開いた口が塞がらなかったわ。
「すまんすまん、最近よく出るんだよ。さて、嘘つきは誰かな?正直に言ってみろ。私は心臓の音を聞いて嘘を見破れるんだ。水掻きもついてるぞ。体が重くて水に浮かばないから意味はないが。」
「女王様、私は嘘を言ってないの。本当に兵士たちはお互いに顔を刺し合ったの。」
私がそう言うとね、ピコンピコンと女王様の体から変な音が鳴ったの。なんだろう。
「うむ、たしかにお前の言葉に嘘はないようだな。よって兵士たち四人は嘘ついた罰として死刑だ!」
「そんな!女王様!お許し下さい!早とちりしてすみません!」
「ダメだ!規則は規則なのだ!規則を破ったら死刑だ!そこまでが規則だからな!」
「そかぁ。」
「女王様、その四人はどうしても助けてあげられないのですか?」
「当然だ。規則だからな。」
ピュゥイーン!ってね、女王様からまた変な音がしたの。
「ひぇぇ!この音は水の死刑だ!どうかご勘弁を!」
するとガチャリと地面の蓋が開いて、兵士たちが落ちていったわ。すぐにバシャンと水に落ちる音がして、次にうめき声が聞こえてきたけど、女王様が蓋を閉じちゃったからどうなったのかわからない。
「さて、魔女と呼ばれた者よ。お前の目的はなんだ?もちろん嘘は通用せんぞ。」
「私はおうちの庭で遊んでいたら、白と白に挟まれて、気がついたら霧の森にいて。この街に来たらおうちへ帰るための手掛かりがあると思ったら来たの。」
「それは大変だったな、かわいそうな少女よ。」
女王様のおしりからカボチャがたくさん出てきて、そのまま地面に落ちて割れていく。とても、もったいないの。
「私は少し変わっていてな。涙のかわりに下半身からカボチャが出るのだ。まったく。」
「私はどうするべきなのかしら。おうちへ帰りたいの。そこがどんな場所だったかも忘れちゃったけど、きっと幸せな場所だったと思うの。」
「本当にそうなのか?おうちが幸せだった証拠はあるのか?」
「心の中に、ちょっとだけある、夕陽の色。とても寂しくて、でもあたたかいクリームシチューの香りがしてね。あたたかいの。」
女王様はカボチャを撒き散らしながら赤い光を放って壁を爆破し、うなずいた。
「うむ、理由はよくわかった。私が協力しよう。まずは街の六番通りにある赤い屋根の家へ行くがよい。帰る方法が見つかるまではそこで暮らせ。理由は私から説明しておく。」
「ありがとう。とても助かるわ。あなたは月のように美しい銀色の女王様ね。」
ピコーンピコーン!ドワーン!グワッシャーン!
「うーむ、最近どうも胃の調子が悪いのう。」
私は六番通りの赤い屋根の家へ向かったの。
私が街へ入ろうとすると、二人の門番が手に持った剣を交差させて道を塞いだの。
「ぎゃぁぁぁぁ!」
交差させた剣がそのままお互いの顔に刺さって、二人とも死んでしまったわ。あら大変、どうしましょう。
そこへ四人の兵士が鎧をガチャガチャ鳴らしながら走ってきたの。二人の兵士と四人の兵士で、合計六人の兵士になったわ。
「何事だ!うわ!死んでる!誰がやったのだ!」
「兵士さん、この二人はお互いに顔を刺し合ったの。事故だわ。」
兵士さんたちは私の方を見た。
「貴様は誰だ!さては霧の森からきた魔女だな!」
「いいえ、違うわ。私はただの迷子なの。」
「嘘だね!魔術を使ってこの二人に殺し合いをさせたんだ!そうに違いない!」
私は両腕を大きな手で抑えられて、今にも泣き出しそうだわ。だってこんなの理不尽だと思うの。
「殺人の罪で死刑だ!牢屋へぶち込め!」
私は兵士四人に腕を掴まれて、街の中を引きずられていくの。街の人達が不思議そうな顔をしていたわ。すごく恥ずかしくて、怖くて、どうすることもできなかったの。だから黙って大人しく引きずられていくと、街の中心にある三角形で銀色の建物の中に連れ込まれたの。とても大きな建物だったわ。
中はとても不思議で、銀色に輝く床や壁、そして四角い箱がたくさん浮かんでいたの。こっちの方が魔術じゃない。
「女王さま!門番を魔術で殺した魔女を捕らえました!どうなさいますか!」
肌も髪も何もかも銀色の女王様が、銀色の浮かぶ椅子に座っているの。まるで鉄で作られた人形のようね。生きてるのかしら。
「魔女よ。ようこそ我が国へ。私はこの名も無き国の女王、もちろん私にも名前がないから女王様と呼ぶのだぞ。」
「ふええ。」
「魔女よ。お前は本当に魔女なのか?兵士を殺したのか?」
「いいえ、殺してないわ。あの二人が剣を交差させて勝手に死んだの。」
「なるほど、ん、ちょっと失礼するぞ。」
ドカーン!
女王様のおしりから赤い光が出て、壁を爆破したの。私は怖くて石像みたいに固まっちゃって開いた口が塞がらなかったわ。
「すまんすまん、最近よく出るんだよ。さて、嘘つきは誰かな?正直に言ってみろ。私は心臓の音を聞いて嘘を見破れるんだ。水掻きもついてるぞ。体が重くて水に浮かばないから意味はないが。」
「女王様、私は嘘を言ってないの。本当に兵士たちはお互いに顔を刺し合ったの。」
私がそう言うとね、ピコンピコンと女王様の体から変な音が鳴ったの。なんだろう。
「うむ、たしかにお前の言葉に嘘はないようだな。よって兵士たち四人は嘘ついた罰として死刑だ!」
「そんな!女王様!お許し下さい!早とちりしてすみません!」
「ダメだ!規則は規則なのだ!規則を破ったら死刑だ!そこまでが規則だからな!」
「そかぁ。」
「女王様、その四人はどうしても助けてあげられないのですか?」
「当然だ。規則だからな。」
ピュゥイーン!ってね、女王様からまた変な音がしたの。
「ひぇぇ!この音は水の死刑だ!どうかご勘弁を!」
するとガチャリと地面の蓋が開いて、兵士たちが落ちていったわ。すぐにバシャンと水に落ちる音がして、次にうめき声が聞こえてきたけど、女王様が蓋を閉じちゃったからどうなったのかわからない。
「さて、魔女と呼ばれた者よ。お前の目的はなんだ?もちろん嘘は通用せんぞ。」
「私はおうちの庭で遊んでいたら、白と白に挟まれて、気がついたら霧の森にいて。この街に来たらおうちへ帰るための手掛かりがあると思ったら来たの。」
「それは大変だったな、かわいそうな少女よ。」
女王様のおしりからカボチャがたくさん出てきて、そのまま地面に落ちて割れていく。とても、もったいないの。
「私は少し変わっていてな。涙のかわりに下半身からカボチャが出るのだ。まったく。」
「私はどうするべきなのかしら。おうちへ帰りたいの。そこがどんな場所だったかも忘れちゃったけど、きっと幸せな場所だったと思うの。」
「本当にそうなのか?おうちが幸せだった証拠はあるのか?」
「心の中に、ちょっとだけある、夕陽の色。とても寂しくて、でもあたたかいクリームシチューの香りがしてね。あたたかいの。」
女王様はカボチャを撒き散らしながら赤い光を放って壁を爆破し、うなずいた。
「うむ、理由はよくわかった。私が協力しよう。まずは街の六番通りにある赤い屋根の家へ行くがよい。帰る方法が見つかるまではそこで暮らせ。理由は私から説明しておく。」
「ありがとう。とても助かるわ。あなたは月のように美しい銀色の女王様ね。」
ピコーンピコーン!ドワーン!グワッシャーン!
「うーむ、最近どうも胃の調子が悪いのう。」
私は六番通りの赤い屋根の家へ向かったの。