ひとつだけ


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亜美ごめーん。
あと1時間くらい遅くなりそう。
どっかで時間つぶしといて~

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あ、やっぱり。

今日は仕事終わりに、高校時代の友人・優子と2年ぶりに会うことになっていた。

待ち合わせ場所のS駅で時間になっても現れないからもしかしたらと思ったら、メールがきた。
うん、仕事で遅れるかもってきいてたからな。

本屋さんでも入ろうかな。


私は駅ビルの4階に入ってる本屋さんにエレベーターで向かった。

ワンフロアすべてが本のコーナーになっていて、このへんでは一番大きい本屋さん。


エレベーターから出ると、目の前に童話のコーナーがあった。
それはほとんどが絶版になった作品が並べられていた。

私はそこに吸い寄せられるようにして歩みを進める。

あ、これも懐かしいな。
あー、これも。

子供の頃よく読んだっけ。


あ……。

一冊の本に、目が留まる。

子どもの頃飼ってたワンコに毎日のように読み聞かせてたっけ。


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