アオハル紙飛行機
いきなり始まったままごとはあまりにも過酷だった。ちなみにマコちゃんという女の子が真琴の妹であるのだが、マコちゃんは明らかにアオに夢中である。
「ま、マコちゃん私犬はちょっとなあ・・・」
『こら!犬はワンワンしか言っちゃダメなのよ。ほらさとる起きて朝よー!』
「(もう始まってるし!)」
くすり、と嘲笑うような低い笑い声が隣から聞こえてきた。泣きそうになりながらそちらに条件反射の如く視線を投げかければ。
『ぶふっ』
「ああ?なんだてめぇ」
胡座をかいて頬杖をついたアオが大層御機嫌よろしく私を見ながら嘲笑ってくる。綺麗な顔してやがるから尚更腹が立つ。
私の反論にアオは更に愉しそうに笑ったかと思えば、いきなり自分の顔の良さを最大限に活かしてマコちゃんの服をくんくんと引っ張る。
『あら、どーしたのアナタ。』
『あのブサ犬が俺に噛み付こうとするんだ。俺怖くて』
「はあ?ブチのめ、」
『こらポチ!だめでしょ!今日はご飯抜きだからねー!』
私はマコちゃんにこっぴどく叱られて犬役なので何も言い返せず、うぐぐぐと言葉を飲み込む。
すると、マコちゃんが視線を逸らしたその瞬間、ふ、と吹き出すような笑い声が私に届く。
もちろんそれはアオで、奴はわざとらしく含み笑いを零すと、片手を口元に当てて、私を見下して大層面白そうに笑うのわざと堪えている。