アオハル紙飛行機







「どうも」

『・・・あ、こ、こんにちは』




アオが隠していた人物と対面する。見るからに気弱な男子生徒。長い前髪に眼鏡。自信のなさげな立ち姿。もじもじとする彼にソファーに座ったまま笑顔で声を掛ける。




「入って入って。お菓子あるよ」

『あ、は、はい』

「どーぞどーぞ」




躊躇いながら異界に足を踏み入れるような動きの彼に構わず、私は机の上に広がるアオのお菓子をばくばく食べ始める。



ソファーの横に立って俯く彼に「好きな所に座って」と声を掛けるとあからさまに隅っこに座る。俯いてばかりでその表情は全くわからない。





「・・・あ、紙飛行機作ってきてくれたんだ!」

『え?あ、は、はい。そうやって、書いてあったので、』

「そうそう。なんで紙飛行機なのか私もさっぱりわかんないんだけどねー」





ケタケタ笑う私に初めて彼が顔を上げた。初めて見る彼の怪訝そうな顔は、普通のただの男子高校生の1人だ。どちらかと言えば優しそうな雰囲気の。



初めて興味を示してくれたネタを上手く活用して心を開いてもらおうとすふ。笑いながら部室の角の棚に収まる段ボールを指さす。





「あの段ボールの中、全部紙飛行機。今までここに来てくれた人達の、全部」

『・・・いくつ入ってるんですか?』

「んー?わかんない。去年の5月からだけど、言われてみれば数えたことないな」




段ボールから彼に視線を移せば、彼はまだ不思議そうに段ボールを見つめていた。私だって、不思議なんだよなあと自然と声が落ちる。





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