アオハル紙飛行機
「夏子」
『やっと帰ってきた』
夏子がこちらを向いたのと同時に、ひょこっと扉の内側から故原くんも顔を出す。それにアオが反応する。
『あれ、お前らいつの間に仲良くなったの』
『俺が紫春探してたら廊下歩いてた平野さんが春井ちゃんと一緒だって教えてくれたんだ』
夏子達の元に辿り着く。にこにこする大量ピアス故原くんと違って夏子は呆れ返った表情で私に問いかける。
『で、またクレバー狩りしてたの?』
「クレバー?」
『あーごめんごめん。成績優秀者狩り』
「えー、何それ、そんなことしてないよ」
私の返事に夏子は更に呆れると、廊下の窓枠に手を置いて、長い溜息を零す。そうして私とアオを憐れんだ目で見つめると遠慮なく言葉をぶつける。
『アンタら、成績優秀者の中では“試験前の死神”って言われてるのよ。知らないの?』
「何それ、とんだ美男美女過ぎて困るってこと?」
『俺もそう思った』
『馬鹿か』
夏子は私達に幻滅しているのか、額を抑えて黙り込んでしまう。その代わりに故原くんが夏子に埋め込まれた知識を私達に教えてくれる。