アオハル紙飛行機
全人類の男には不意打ちの「可愛い」という単語に女子が弱いことを気づいて欲しい。
『最近太ってきたら、ふてぶてしさが正にハルそっくり』
「ふぁっきゅー!」
ぐすぐすと泣きそうになりながらくぐもる声でそう言ったアオの後頭部の髪を鷲掴みして禿げろと言わんばかりの力で引っ張る。
『いだだだだだッ!はあ?なんで!?ハルと違って俺のさらさらヘアーに何すんだよくせっ毛!』
「今すぐ禿げろさらさらヘアー」
『うっせえ!』
言い合いをしていれば、いつの間にか本編が始まっていた。
画面が真っ暗になって元々暗い部屋が更に暗くなり、アオが再び悲鳴を上げて私にしがみついてくるが、怒りのまま蹴飛ばし引き剥がす。
それでもしがみついてこようとするアオを何度か邪険にしていれば、アオはそっと離れる。
『・・・・・・よ、ヨユーだし』
震える声が隣から聞こえてきても、ガン無視で私も画面に集中する。まだ始まったばかりなので怖いシーンも何も無いので、ヨユーなはずだ。
だけど、タイトルが浮かび上がる怖いシーンになった瞬間、アオから弱々しく怯えるような切実な声が届く。