アオハル紙飛行機



早速蓋を開けて飲もうとしたアオが、体力皆無なのか蓋が開けられず私を見つめてくる。





『ハル、開かない・・・。』

「女子かよ」





キュ、と蓋を捻って開ける。アオに渡せば奴は御礼と共に「イケメン」といらん言葉を付けて受け取った。



スポーツドリンクを飲みながら会場の様子を見ていたアオは無表情のまま言葉を零す。





『・・・9回裏1アウトランナー1塁』

「え?アオって野球知ってるんだ、意外」





淡々と落とされた彼の言葉に思わず反応する。アオは沈黙を置いてその双眸だけを私に寄越したが、ふわ、といつも通りのやる気のない笑顔に戻る。





『──まあね』

「勝部先輩達、勝ってる?」

『3点差で負けてる。しかも今、2アウトになった』

「え?」





アオはグラウンドに視線を泳がせて最後の代打である勝部先輩を眺めた。勝部先輩の重圧がわかるからか、少し苦しそうな顔をして私に告げた。





『あー・・・つまり、勝部先輩が打てなかったら終わり』





アオの言葉に呼吸が止まりそうになった。
バッターボックスに入った勝部先輩は、ただ真っ直ぐと相手の投手を見つめて、ゆっくりと構えた。





「・・・先輩・・・・・・お願い、お願いだか・・・!」





前のめりになって、両手を握りしめる。直視するのが怖くて目を閉じてしまいそうになるのを必死で耐える。ここまで来たのに、ここで逃げちゃだめだ。






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