アオハル紙飛行機





そんなアオに気づかない故原くんはパンク寸前のままアオへと声を掛ける。






『紫春もそんな感じなの?春井ちゃんに』







故原くんのその言葉に、真っ黒な瞳だけで故原くんを捉えたアオは無表情のまま、瞬きをゆったり二、三度繰り返す。

そのまま私へと瞳を寄越した。その瞳とかちあえば、酷く辛辣な視線が当てつけられる。




そうしてアオは私に容赦のない視線を送り付けておきながら、故原くんに視線を戻す。パチ、と膨らませた風船ガムを割ると薄い唇をゆっくりと開けた。








『・・・俺は、ハルのこと───、』






だが『青海』と、私の名前を呆れた声で呼ぶ夏子の声でアオの声は遮られた。




そして3人で夏子へと視線を向ける。もうジャージに着替えた夏子が廊下の窓から顔を覗かせ、呆れ顔で制服姿のままの私達を見つめていた。








『体育始まってますけど』

「え!?!?」

『体育教師に呼んでこいって言われて来てみれば、3人とも何してるの』









夏子の心底疲れたような声に慌てて辺りを見渡せば教室には私達だけだった。夏子が呼びに来てくれたのかと思い、慌ててアオからジャージを奪う。









『あ、おい!そっち俺のだろーが何取ってんだよばーか!』

「アオは半袖短パンがこの世で1番似合う男だと思う」

『要らないそういうの心底要らない。返せよ!』

「返せと言われて返したら泥棒いねえんだよ」

『なにお前上手いこと言った?みたいな顔してんだ上手くねえよただの馬鹿だろ』









ベシ、とアオにおでこを叩かれて顎をしゃくらせながら睨みつける。アオの長袖長ズボンセットのジャージを握りしめて絶対離さないと決意した途端、アオに思いっきりそれを引っ張られて綱引きが始まる。








───・・・先程のアオはもういない。








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