アオハル紙飛行機







私と夏子は同じゾーンで取り敢えず顔面に懐中電灯を当てて笑うだけの作業。だがこれがなかなかうけている。喜んでいいのかどうかちょっと微妙だ。



どんどん次から次へと流れ作業のようにお客さんに悲鳴を上げさせてはすぐに懐中電灯を消す作業を2人で続けていれば、1人で来たお客さんに例外もなく同じことをする、が。





『あっ、いたいた平野ちゃん春井ちゃん』

「うわ!故原くん!」

『迎えに来たよー。もう10時になるのに休憩入ってないみたいだからさ』





懐中電灯を当てた先にはけたけた笑う故原くんは本日は大量ピアス増量中だ。私と夏子は慌ててスマホで時間を確認する。確かにほんの少し過ぎている。







『羽鳥くん、私と青海、休憩入ってもいいー?』

『あ、言うの忘れてた!悪い悪い、行ってきてー』

「ありがと」







出口がすぐそこなので、お客さんがここに来ないうちに3人で出口に向かって歩き出す。






「ねえ、アオは?」

『紫春がここに入れると思う?』

「あ、そうだった」








3人でビビり上がるアオを想像してくすくす笑い合って、廊下に出る。と、廊下に物凄い人混みを作る主。すぐに故原くんが「紫春ー!」と大きな声で叫ぶ。






するとその人混みのど真ん中で片手をバッと上げて助けを求めるようにぶんぶんとそれが振られる。







< 259 / 421 >

この作品をシェア

pagetop