アオハル紙飛行機
私に差し出される「部活創設届け」を見つめて溜息を零した学年主任はぺらり、と折れ曲がるそれを持ち上げ指をさす。まるで小さな子供を宥める時のような口調まで備えて。
『あのな、部活を作るためにはまずは最低5人ってここに書いてあるだろ。それに“双眼鏡部”ってなんだ。作るのか?』
「そ、双眼鏡について、色々…実践したり実践したり実践したり、」
『実践しかしてないだろ。取り敢えず却下』
「ちぇっ」
『それより春井さ、学校パンフレットの、』
「興味ないでーす。また来まーす」
唇を尖らせて却下された部活創設届けを見つめながら職員室の出口へ向かう途中、先程の学年主任と副校長が話声が聞こえる。
『次年度の学校パンフレットの見本は出来たかのかな?』
『あ、大方完成してるんですけどちょっと、』
『ちょっと?』
『いや、制服写真を撮ってくれる男子生徒、女子生徒が見つからなくて』
『今日中に完成できそうなのか』
ドン、と先生達の会話に夢中になり過ぎていた私に誰かがぶつかった。
『ごめん大丈夫?』
顔を上げれば、言葉とは裏腹に心配した様子の欠片もない無表情の顔の男。