アオハル紙飛行機







『──選択を迫られた時にどうしても切り捨てられないもの』

「え?」

『俺の大切なものの定義』





アオの顔をまじまじと見つめていたせいで、自分から話を振ったくせに忘れていた。アオは私に視線を向けられることに気づいていながらも、億劫そうに天井を見つめている。







『ハルは?』

「私は・・・」




切り返されて、思わず考え込む。いざ、大切なものってなんだろうって考えるとなかなか思い浮かばない。だから人は大切なものを失って初めて気づくなんて言われるのかもしれない。





「・・・だめだ、全然わかんない。答えが出ない」

『ハルは深く考え過ぎ。答えなんてないだろ。例え今答えが在るとしてもそれは変わる』

「そういうもん?」

『そういうもん』

「アオは変わったもの、あるの?」

『んー』






暫く考え込むように鼻濁音で空気を揺らしていたアオ。無表情な顔がほんの少し困ったように口角を上げた。







『───────好きな人の護り方』






思わずアオの瞳を見つめれば、アオも私の瞳を見ていた。2人で、同じ空間の中で、互いの瞳だけを見つめ合う。



さらり、と柔らかなアオの黒髪が綺麗な瞳にかかって、読み取りにくい表情を更に読み取りにくくさせる。



だけど、私と瞳がかち合ったアオは切なげに儚げに伏せ目がちに睫毛を揺らした。






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