アオハル紙飛行機
『きたきたきた』
アオは先に本日の獲物を見つけたらしく、私にそう告げると視線はもうそちらに釘付けだ。
この獲物を尾行するため休日を返上して2人で寒い中、駅前で息を潜めていたのである。
『ごめん、拓人くん。おまたせ』
『あ、夏子ちゃん、待ってるのも楽しかった!』
『あは、何それ』
『ほんとのこと』
本日は、12月24日。故原くんが爆弾の如く、夏子をデートに誘った日である。
『もー何あいつら、腹立つわ』
「お前ほんと見境ないな。友達だろ」
『何言ってんだ友達のリア充の方がムカつくんだよ』
「最低。でもいつの間に名前で呼び合うようになったのよ」
アオのお決まりの僻みを聞き流し、2人でお友達デートを尾行する。クリスマスイブにこんなことをしているのは、きっと私とアオくらいだ。もはや虚しいのも通り越す。
「どこ行くの」
『映画館と遊園地とランチとイルミネーションだって』
「盛り込んだな故原くん」
『多分アイツ時間の計算できないから』
「でも夏子飽き性だからいいのかも」
なんて話をしながら怪しまれない程度に2人を追尾する。やけに電柱や木に陰に隠れたがるアオを引っぱたいて普通に歩かせる。
アオは寒そうに紺のマフラーに顔を埋める。かなり寒がりなアオの隣で快活に歩く私。プラスとマイナスみたいだ。
一番最初は映画、なはずなのに故原くんは嬉しそうにファーストフードを指差して2人で入って行った。
『アイツぅうう!初っ端からフェードアウトしやがった。はぇええええ』
「お腹すいてたんだね」
『犬か!動物か!』
とか言いながら私達も2人と同じ人気チェーン店に入る。2人から死角になるところで様子を窺う。つもりが、美味しそうにがっつりパンケーキを頼んでもぐもぐしているアオ。