アオハル紙飛行機
『・・・っあー苦しかった』
「おつかれさんでーす」
『ハル飲み物持ってない?』
「お茶ならあるよ」
『ちょーだい』
私からお茶を受け取ると当たり前のように口をつけて飲む。そういえば、私達に間接キスきゃーなんて最初からなかったな。
『ん?ハルも飲む?』
「いらない」
『あそ。ありがとう』
「あーい」
私の返事を聞いてペットボトルのキャップを閉めたアオからそれを受け取り、故原くん達が映画館に入ったので私達もそれに続く。
「やっぱりさ、〈ゲルゲドン海を泳ぐ〉だよね」
『俺もそれ観たい』
「絶対面白い」
『だって〈ゲルゲドン長靴を履く〉めっちゃ面白かったし、続編も当たりだろ』
「あれは最高だった。ラスト泣いたもん」
『俺も鼻水垂らして泣いた』
「きたな」
『おい』
2人でゲルゲドンを見る気満々だが、今日の目的を一応頭の隅っこに備えてはいる。アオが物凄いスピードで2人が券売機でチケットを買う後ろを3往復しながら走って戻ってきた。
その顔は悲しみに明け暮れている。そうして私にこの世の終わりとでもいうよりに嘆く。
『アイツら純愛ラブストーリーの買ってるぅううううああ・・・!』
「あああなんでそれ!?ゲルゲドンがいい!」
『俺もこっちがいいいいいああああ』
とんだ迷惑な客である。2人で絶叫しながら壁に頭を打ち付ける。ふと周りのお客さんの視線を感じ、慌ててアオのマフラーを引っ張る。
未だに嘆いていたアオはぐえっと首が締まる。彼らに私達のことがバレていないかこっそり視線を向ける。2人で楽しそうに話しているので大丈夫そうだ。