アオハル紙飛行機
「はあー、セーフ」
『・・・ア、ウト、』
私の声に死ぬ寸前の掠れ声が続いた。
「は?あ、ごめん」
アオの首を締めたままだった。目ん玉ひんむかせるアオのマフラーを離すと、げほげほと噎せる顔だけ男。
『俺今日もう2回くらい三途の川見えてる』
「え?算数の川?」
『はい馬鹿ーもういいでーす。じゃあチケット買いに行こ』
呼吸を整えたアオは乱れたマフラーを直しながら券売機に向かって歩き出す。泣く泣くゲルゲドンの下に表示される純愛ラブストーリーを選び、私がお財布を取り出そうとすればアオの手に押さえ付けられる。
『今日は俺が出すから3年後ハル出して』
「3年後?」
なんだそれと思いながら首を傾げる。その間にアオはさっさとチケットを2枚買うと私に1枚渡す。首を傾げたまま受け取らない私に呆れたようにアオが溜息を零す。
『3年後も俺と映画観てってこと、あほ面ちゃん』
そう淡々と吐き出したアオは私の唇の間にチケットの券をふにっと挟んだ。私は慌ててチケットを取って、口を開く。
「当たり前じゃん。90年後奢るわボケ面くん」
『待って待って超絶シニア。駄目だよ俺縁側から動く気ないから』
「はー?何それそんなの駄目。引きずりだすから」
『ハルに家の鍵なんて渡すかよこえーわ』
「別にいいよ塀飛び越えるから」
『強過ぎだろ。さすがにそれは無理』
「まあ塀はきついなあ。じゃあ無理じゃん」
チケットをひらひらさせ、開場になるまで話をながら待機する。アオは腕を組んで閃いたように口を開く。