アオハル紙飛行機
シアター内に入り、座席を確認して座った瞬間。
『あああああああやべえええ・・・!ハルーハルーやべえーハルー!』
「ちょ、ばか、シーッ!」
アオが私と反対側に顔を逸らしたかと思えば、物凄い勢いでこちらに向いた。そして焦ったように小声で私に叫ぶ。
私は呆れながら、シーッと人差し指を唇の前に立てれば、その手をアオの手に思いっきり握られる。
『ちょちょちょ、俺の隣・・・!座席1つ開けた隣!』
「はあ?・・・あっ、」
アオの身体からひょこっと顔を出してそちらを見た。なんと至近距離に故原くんと夏子。座席までは調べるのは困難だがこんなこと合ってはならない。2人で唸り声を潜めながら上げる。
「やばいやばいやばいどうする」
『いやもうこれ俺ハルの方しか向けない何これなんでハル見なきゃなんねーの。なんの罰ゲーム』
「は?ご褒美の間違いだろ」
『熱湯風呂レベルだから。取り敢えずシアター内暗くなるまでこうするしかない』
「なんの拷問」
『それな。首痛い』
「もう身体向けなよ」
首をぐりんとこちらを向けたままのアオはめちゃくちゃ苦しそうで泣きそうだ。私の言葉に何度か首を縦に振ったアオは身体をこちらに向ける。
「・・・いやなんだこれ」
『それな。なんだこれ』
何が面白くて映画館でガッツリ身体を向かい合わせなければならないのだ。と、その時アオの後ろの故原くんの声が聞こえる。
『あ・・・っ!』