アオハル紙飛行機
『だいたい駅から着いてくるなんて、どんだけ尾行好きなのよ』
「え!」
『バレバレだから。よくバレないと思ったよね』
『ほらー、やっぱり変装すべきだったんだよ。俺はキツネでハルがフランケンシュタイン』
「いや意味わかんないんだけど私がキツネだから」
『俺がフランケンシュタインとかやってもただのイケメンシュタインになっちゃうだろ』
「消えろばか滅びろ」
『ああ?滅びって漢字書けるようになってから言いやがれカス』
「じゃあアンタ書けるわけ?」
『書けませんが何か?』
『2人とも黙ってくれる』
「『ハイスミマセン」』
夏子の低音にしゅぴん、と姿勢正しく立つ私とアオに夏子が容赦なく罰を下した。
連れてこられたのは遊園地。故原くんのデートプランに組み込まれていた場所だ。アトラクションに乗る度にお金を払うシステムなので園内に入るのは無料だ。
そして、夏子は私とアオに振り向き、背中に聳え立つそれを指差す。
『これ乗って、詫びて』
「うわー・・・」
『無理無理無理死んじゃう』
『ここで死ぬならそれが運命。受け入れろ』
アオの全力否定に夏子はにっこりと微笑んだまま言葉のナイフをぶっすり刺す。それにアオはびっくりして固まった。夏子は相当ブチ切れている。
聳え立つのは、明らかに高さと角度がおかしいジェットコースター。一回転は勿論、落下の角度がこの世のものとは思えない。
絶叫がそんなに苦手ではない私も多少たじろぐ。ので、ホラーだめ暗闇だめ絶叫だめなダメンズへたれ野郎のアオにとっては死刑宣告レベルである。
白目を剥いたアオは天に祈るように何も無いところで拝む。そして私に連れられるまま魂が抜けた身体だけが着いてくる。