アオハル紙飛行機
列に並んで少し進むと女性スタッフの説明が入る。スタッフは困ったように笑い、透明なショーケースの中に入ったそれらを指差す。
『こんにちはー、ようこそ!このジェットコースターでは腕時計、携帯、ピアス、そういったものは全て鞄の中にしまって頂いております』
「あ、はい」
『もし仕舞わずに落下させてしまうとこのようになってしまうのでお気をつけ下さい』
『ひぃいいいっ!』
アオがそれを見て悲鳴をあげる。ほんとに情けない。
でもショーケースの中はバキバキに割れたスマホに、同様にぼろぼろを通り越してバッキバキぐしゃぐしゃな腕時計、粉々になった大きめのピアスは原型を留めていない。ブレスレットなども見るも無残である。
『おねえええええさんんんん俺達の身体もこの子達みたいになっちゃうんですかぁああ・・・!』
「アオ黙れ落ち着け」
『俺も鞄にしまってくださいぃいい・・・!』
アオは今にも泣きそうな顔で女性スタッフに懇願する。それに困ったような微笑みながらも、アオの顔の良さに少し満更でもなさそうなスタッフさん。顔だけ野郎はこういう時も強い。
『ハル、俺の遺言書は、』
「死なないから大丈夫」
『遺産は俺の部屋の貯金箱に230円』
「少な!」
『まだあるっつーの!机の引き出しのお年玉袋の中に170円』
「少な!」
なんて話をしていれば、もう順番が次に迫る。最終列に並び、その扉が開いてジェットコースターに乗り込んだが最後、逃げられない。
さすがに私も少し怖くなって悲鳴が聞こえる度にそわそわする。
『がたがたがたがたがたがた』
「・・・うるさい」
『ぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶる』
「うっさい」
『あばばばばばば・・・!』
「うっるさいってば!」
隣で下顎をがたがたさせながら身体を震わせるアオは完全に目が逝っている。唇が紫に変色しているあたり、本気で死ぬかもしれない。