アオハル紙飛行機





『映画館はイチャイチャするところじゃありませーん。ばーかばーかばーかばーか。3Dメガネの機能なくなってお前らだけ戸惑いやがれくそったれ』

「ゲスいな本当に。嫉妬丸出し」

『イチャイチャすんだったらラブホ行ってろぼんくら!』

「、」





予想外な言葉にびくっと反応してしまう。今こいつ、普通にラブホって言った。アオからそういった関連の言葉を聞くのは初めてであまりに急な爆撃に固まってしまった。


私からの突っ込みがないのに気づいたアオが私の顔を不思議そうに覗き込む。その顔から逃げるように必死で逸らす。





『え?なんで赤いの?え?俺の3D眼鏡姿に惚れた?』

「うざいてか近い退いて変態」

『え、まさかラブホに反応してんの?えー、お前うーぶーっ!』

「うっるさいばかはげ!」

『ふさふさデス!』





私の言葉にアオは自分の髪を掴んで「ふさふさだ!」と繰り返してくる。「そこ」についてなんて詳しく知らないけれど、たまにメディアで見掛ける度にやっぱりそういうところなんだなあと他人事のように思っていた。



そんな言葉がさらりと落ちるなんて。未だにふさふさ主張がしつこいアオを一瞥して、アオが他の女の子と一緒にいるところを頭に浮かべてしまった。



こんがらがる私を救うようにシアター内が真っ暗になる。隣でふさふさうるさかったアオも静かになり、私もそれをかき消すように映画に集中した。







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