アオハル紙飛行機
『それに、なくしたものから得たその過程も経験も、ちゃんと糧になってんじゃね?多分』
「・・・ごめん、悲劇のヒロイン気取るとこだった」
『いいよ。昨日ハルが食った俺のポッキー返してくれれば許す』
「なくしたもんばっか数えんじゃねえよ」
『はあー?さっきの話とポッキーの話は別物ですぅー。俺のポッキーは失う事さえ許されないほど重要なんですー』
「どうしようめっちゃうざいぶん殴りたい」
アオがゆったりと起き上がり、最大に変な顔をしながら私にポッキーを催促してくる。こいつの言葉に感動した自分を撲滅したいと思う程うざい。
そんなアオを無視して、再度窓の外へと視線を流す。部活動に励む勝部先輩を眺める。もう、双眼鏡は使っていない。
今だって勝部先輩を見ればもちろん胸が熱くなるし、応援したい気持ちで溢れる。
ただ、失恋してから気づいたのは、軋む胸は振られた直後だけでその後いくら勝部先輩を眺めても胸が張り裂けそうなくらい苦しいといったことは何もなかった。
だから逆にこうして、もはや義務的な行為として勝部先輩を見つめることをやめられずにいることも事実だ。