アオハル紙飛行機
部記録その25
なんでもないの説得力は皆無なので気にしてほしい時にはなんでもない
「修学旅行ーっ!」
『昨日から始まってますけど』
「うるさいな!」
『ちなみに今日もう半分終わりますけど』
「うるさいってば!」
思いっきりアオをぶん殴る。私服を良いことに寒がりなアオはお洒落なコートにマフラーにニットにと、めちゃくちゃ厚着しているので攻撃力は半減。
本日は修学旅行2日目である。昨日の全体行動はとにかく有名大学を巡りに巡って頭がぶち壊れる気がしたが、今日になった瞬間元気満点の始末だ。
4人で電車に揺られながらふらふら他愛もない話をする。私と夏子が座る前で吊革に掴まって怠そうに立つのがアオと故原くんだ。
『高校の修学旅行って沖縄とか海外だと思ってたのになあ』
「まあね、沖縄は3年の卒業旅行だもんね」
『私、鎌倉とかって小学生の時の修学旅行だったんだけど』
『あ、夏子ちゃんも?俺もそうだった』
「大体みんなそうなのかな。アオは?」
『どこ行ったっけ?』
「記憶力やばいなお前」
高校2年の修学旅行は本来の目的が東京及びその付近に君臨する有名大学巡りなので、それ以降の自由行動は謂わばおまけに過ぎないのだ。
ホテルがみなとみらいなので、そこからグループで各自、神奈川県の好きな所をとにかく回って、門限の夜8時にホテルに戻ってくる。それだけだ。
『電車の時間だけ気をつけないとね。去年、門限過ぎたグループ次の日劇団四季なしでひたすら反省文に冬休みの課題総復習だってさ』
「え!厳し過ぎない!?」
『まあ、仕方ないんじゃん?過ぎなきゃいいわけだし。私は死んでも劇団四季観たいから遅れないし』
『ハル迷子気をつけろよ』
「アオにだけは言われたくないんですけど」
メンバーがメンバーなだけに修学旅行感が薄れがちだが、きっと次の目的地に到着すればそんなこともなくなるだろう、私は。
他2人は不安だが、唯一私と同類な故原くんも告白的なそれなあれにもう既に目がやばい。