アオハル紙飛行機
───高校2年4月半ば───
『つーかお前はせっかく俺が協力して部室確保してやったのに何の進展もないだろ。何してんだよ』
「うるせー。今では先輩の血液型も誕生日も把握済みなんだよ。アオの方がいい加減現実見たら?」
部室の窓の前でぎゃんぎゃんと、相も変わらず言い合いが始まる。
全く普通の会話ができないのか、と私さえも思うができないものはできない。
野球部の掛け声に時々鳴り響くボールを打ち放つ金属音。テニス部のボールを打つ音。サッカー部の悲鳴に近い掛け声。何処からか風に運ばれてくる吹奏楽部のまだ不安定な音色。
そこに、私たちの言い合いも青春の欠片として小さく溶け込む。
『現実見るのはハルの方だろ』
「現実見てくださーい。私の好きな人はちゃんとこの世に人として存在してますぅー」
『馬鹿かゴリラは人じゃないんですぅー』
「人だボケェ学校通ってんだろ」
『だから来るとこ間違ってんだろ教えてやれよ良い動物園紹介して編入させてやれよ』
「うるせえ勉強もせずに恋愛ばっかしてる真奈美ちゃん好きな奴に言われたくねーんだよ」
『いいんですぅー真奈美ちゃんはちゃんと勉強してますぅー!もはや赤点取っても可愛いから正義なんですぅー』
飽きもせずに毎日毎日言い合って、喧嘩して、でもそれがアオで、その相手がアオで良かったと思う。