アオハル紙飛行機

自分の辛い過去はいつか誰かを救うためにあると気づけた時に強くなったと実感する











『最後にファースト、青井』

「は、はい!」







監督のこの一言が、呪いの始まりだったのだと思う。いや、この瞬間の俺にとっては嬉しい限りの言葉だったのだけれど。





中学1年の6月。野球部に入部した俺に、レギュラー入りというまさかの出来事が舞い降りた。







『明日からレギュラー中心に練習な。コート整備、準備は補欠がやるように。以上、解散』






監督の威厳ある声に大所帯の野球部が揃った返事をして、学年ごとにそれぞれの片付けに走り出す。1年の俺たちは当たり前のように雑用だ。









『青井すげえじゃん。お前野球上手いもんな。いいなー』

「そんなことないって。でも、出れるなら先輩達に迷惑かけないように頑張んなきゃな」

『頑張れよー!』

「岡本声でかい」

『うるせー!』







コート整備をしながら、同じ学年の岡本や他の部員達と軽く会話を交える。平静を装いつつも、嬉しさが腹の底から込み上げてくる。





同年代の男子と比べて運動能力は高い方じゃなかった。だけど小学生の時から父親と一緒にやっていた野球にだけは縁があって、中学も大好きな野球をやるために当たり前のように野球部に入った。







< 376 / 421 >

この作品をシェア

pagetop