アオハル紙飛行機
でも、俺の考えはどこまでも浅はかで。
俺のレギュラー入りが決まってから早1週間で、俺の取り巻く環境は何もかも一変した。
「すみません!先輩、もう一球お願いします!」
『早くどけよ。時間の無駄』
2年の先輩も3年の先輩も、露骨に俺への対応は酷くなっていた。何をしても怒られるか、無視される。どんな些細なミスも鋭い眼光と怒号と舌打ちによって、一切のミスを許されなくなった。
俺の鞄や荷物だけが部室の外に放り出されて、俺だけは部室を使うことが許されなかった。
顧問が見えない所では全ての雑用は俺1人の仕事にされた。朝練前の準備も、ボール磨きも、飲み物も、グラウンド整備も、何から何まで。
1つでも小さなミスがあれば、練習を無断欠席しろと脅され、その度に顧問にこっぴどく叱られた。
「岡本あのさ、」
『わり。俺じゃなくて他の奴に聞いて』
「あ、うん。木内ごめん今いい?」
『無理』
同学年も、俺が先輩にされている仕打ちを目の当たりにしてからは一斉に俺を遠ざけた。
最初は、今だけだ、あと少し耐えれば、もっと頑張れば、きっとわかってもらえる。俺の努力が足りないだけだ。いつかきっと、先輩達にも認めてもらえるようになる。
先輩達に、仲間に、ちゃんと俺を認めてもらえるように俺がもっと頑張ればいい。それだけだ。
でも、ある日いつものように準備をしようと部室に行って、扉に手を掛けたところで、中から先輩達の声が笑い混じりで聞こえてきた。