アオハル紙飛行機







動物園に入った途端喧嘩する私達とは違って細々と会話を成り立たせている遠山先輩と戸島先輩。









「戸島先輩は何の動物が好きなんですか?」

『鯉』

「へ?」

『鯉が好き』

「・・・・・・ア、こ、鯉に恋してる系女子なんでッあだっ!」

『すみませんねえコイツほんとにあははっ』







アオも戸島先輩の発言に驚いたように目をぱちくりさせると、慌てて私の後頭部をスパンと叩いてその場から連行する。

ちょちょちょ、と慌ててアオと2人で密着してこそこそ作戦会議である。









「ちょっとやばくない?鯉きた。まさかの鯉きた。鯉って水族館?」

『神社じゃね?てか、え?鯉って動物?なんかよくわかんなくなってきた。水の中にいる奴って動物?てかお前鯉に恋してる系女子って馬鹿かアホかクズか』

「うっさいな。えー、どうしよう。鯉いないよここ。どうする?」

『話逸らして、鯉はなかったことにしよう』








アオとの小声作戦会議を終了させ、改めていざ出陣。珍しくアオが人のご機嫌取りを始める。にっこり、と顔だけ野郎の唯一の長所を活かした笑顔で戸島先輩に問い掛ける。









『今日の昼飯どうします?遠山先輩はパンケーキ好きなんすよねーっ?』

『えっ、俺別に、』

『遠山先輩パンケーキほんと好きっすよねー。戸島先輩は昼何食いたいっすか?俺ら好き嫌いないんで』

『・・・・・・鯉。』

『鯉いいっすね!うん、鯉・・・?』








アオから明るい口調が消え果てる。ぐるん、とこちらを向いたアオの顔は今にも泣き出しそうである。まるで転んですぐにママを見る4歳児。


口をきゅ、と結んでダダ、とこちらに来ると私と肩を組んで2分前に解散したはずの作戦会議がまた始まる。






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