アオハル紙飛行機
白目向きそうな私とは違って、アオはお日様が高くなる度にテンションも上がる。いつもは死んだ魚の目しているくせに、今日はペットショップのトイプードルみたいだ。
「あのさ、アオ、私たちは“控えめに楽しむ”って、」
ルンルン気分のアオに斜め後ろから声を掛けるとまっさらな笑顔で振り向き、パチパチした目のまま問いかけられる。
『え?ごめん何?象の鳴き声で聞こえなかった』
「・・・なんでもない」
『あ、そう?それよりさー、もうなんなのコイツらー。間近で見るとめちゃくちゃきめぇーなあーおーいカピパラー!』
だめだ、何も言えない。初めて動物園に連れてきた5歳児の男の子に静かにしてなんて言えない。
アオはもうキラキラして全力でカピパラに手を振る。なんで手を振る?120%の確率でカピパラは手を振り返してくれないと思うけど。
そして何よりも、容姿端麗お洒落ボーイが期待通り(いやそれ以上)のきらきらフェイスで動物園で動物を楽しそうに眺めてはしゃいでいる姿が、多くの注目を浴びるのは必然。
それは遠山先輩も気づいているようで、周りを見渡して私と目が合うと困ったように苦笑いで合図をしてきた。
「アオ」
名前を呼ぶと、キリンに餌をあげてはしゃいでいたアオはの振り向いた。目をまん丸キラキラさせて口を綻ばせながら。
お前のそんな顔1年ほど付き合いがあったけど初めて見ますそしてさよなら。