アオハル紙飛行機
『じゃあ今日は予定通り体力テストな。体育館でできるもんは全部終わらせるつもりだから迅速に』
体育教師の話に耳を傾けていたがトントンと肩を叩かれてそちらを向く。
その先には真っ黒な艶髪に前髪パッツンの和風美人の平野夏子だった。彼女とは1年の時からの仲だ。
『青井くんが物凄い顔で青海のこと見てる』
夏子の言葉に3組男子の列へ目をやれば、すぐにアオが見つかる。
そして夏子の言う通り、アオはゾンビと鬼が合体したような顔で私を睨み付けてくる。そして私と目が合うと中指を突き立てた。
『何したの?』
「いや別に」
『無自覚で怒らせたのね』
「本当に何もしてないもん」
呆れたように溜息をついた夏子の奥に見えるアオは未だにマジギレしている。その前で私と同様の半袖短パン姿の大量ピアス男、故原くんがわくわくしている。
『じゃあ男子は握力。女子は長座体前屈。さっさと始めるぞ』
先生の声にみんなぞろぞろと動き出す。3組4組合同体育なので、3組のアオとは体育だけ授業が一緒。しかし大体男女に分かれて尚且つ外と体育館で違うことが多く、アオと体育で一緒になるのはなかなかない。
『女子は4列に並んで、長座体前屈ね』
もう1人の若い女性体育教師の号令に従って女子は適当に4列にバラける。
みんな他愛のない話をしながら自分の番が来るのを待っている。多くの女子生徒がぎゃーぎゃー騒ぐ男子達を面白そうに見ては話題に持ち出す。