アオハル紙飛行機
『あ、つぎ故原じゃん』
『喧嘩強いんでしょ?握力とか凄そう』
夏子と話をしていたが、周りの女子生徒の話題の中に見知った名前が出てきて、思わずそちらに視線を向ける。夏子も首を傾げながら私の視線を辿る。
『誰あれ』
「故原くん。アオと仲良しなんだよね」
『ふうん、チャラくさ』
「チャラいっていうか、ピュアくさい?」
夏子と2人で、半袖短パンお馬鹿丸出しスマイル0円の故原くんを見る。彼は握力計の握る所に指を通してくるくる回している。凄いなそれ、力やっぱ強いんだなあ、と故原くんの一見華奢な身体に心の中で拍手を送る。
『いっくよー!んッ・・・!』
ふわふわと笑っていた故原くんは右手に握力計を携えると、息を大きく吸い込んで思いっきり握りしめた。ぐぐーん、と針が故原くんの握力に動かされる。
『はいおっけ。53kgだからー・・・故原は9点な』
『えーマジか。10点っていくつから?』
『56kg。左は頑張れ』
『はーい』
凄くない?と女子達がこそこそと騒ぎ立て男子達は騒ぎながら故原くんの左の計測も気にしている。
そんな中、たった1人、故原くんの次の順番で、半目でぶっすーとした顔のまま、両手を袖に隠してだるそうに立つアホ。間違えたアオ。