アオハル紙飛行機







私が指差した方向を素直に辿った夏子は辿り着いたその先を見て、吹き出して小刻みに震えながら笑う。






『しーはーるーちゃんっ!がんばれよーっ、後少し!後少しで1回だから!』

『残り10秒ー』






視線の先には、もちろんアオである。



絶賛上体起こし中のアオは故原くんに両足を抑えられながら、何故か上体を起こしながら固まっている。ぷるぷる、と心底辛そうに。




マットから身体は浮いているし、後少しで太ももに両肘が着くのに、その後少しの所でひたすら現状維持している。逆に凄い。





『はい終わりー。回数教えにこーい』





終わりの合図と共にアオの身体がばたん、と力なくマットの上に落ちる。


ぜーはーぜーはーと呼吸を繰り返すアオに故原くんが「紫春ちゃん0回ね」と楽しそうに告げる。





『しぬ・・・動けない、死んだ』

『0回のくせに何言ってんの。しょうがないなあ、女の子には優しくしないとな。俺が代わりに先生に回数言ってきてやるよ!』

『ありがとうそしてくたばれ俺は女じゃねえ』

『紫春ちゃんに足抑えてもらったら吹っ飛ばしちゃいそうだから他の奴に頼むね』

『そうして下さい次俺のこと紫春ちゃんって呼んだらお前の下駄箱にジェンガ隙間なく入れっかんな』





アオと故原くんの言い合いに隣の夏子は床をバシバシ叩いて笑っている。この子見た目物凄いおしとやかなのにこれだから好き。







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