昨日までの私と今日からの私。
「親父!」

「ああ、それから。威音のことを考えもしないで、威音と年の近い女を愛人にするような、ふざけたお前が政略結婚なんぞ、これ以上考えるなら…ワシにも考えがあるぞ。ライバル会社に株を譲渡してもいいな。お前の弟も威音の味方だぞ。せいぜい小さな世界で頑張れよ。もう二度と会うことはないけどな。美子さんも…人の離婚裁判ばかりじゃなくて、自分が早く離婚せい。」

凄みのあるおじいちゃんの声音に、会場中が静まりかえっていた。

歩き出すおじいちゃんとおばあちゃんに、着いていく私は。

後ろの二人を見ることもしなかった。

会場を出る際、おばあちゃんはあの男の愛人さんに向かって。

「あなた、若いんだから不倫は程々にしなさいね。娘を見捨てるような男、愛人なんてすぐ捨てるわよ。」

強い。

「余計なお世話ですっ!」

若いなぁ…キレちゃった。

これ、みんなの前で自分から愛人だと認めることになったよね。

怒りで、気がついてないのかな?

実はおじいちゃんより、おばあちゃんの方が断然恐かったりするんだよね。

「そう。じゃあ、あなたの家族にも誇れることを、しているわけよね?じゃあ、伝えても問題ないわね。ご連絡しておくわ。さようなら。」

「やめてくださいっ。」

青ざめた愛人さん。

おばあちゃんはそのまま通りすぎたあと。

「ああ、ごめんなさい。私ったらうっかり。もう連絡したあとだったわ。私と息子は先ほど縁を切ったも同然。力になれなくて申し訳ないわ。せめて、離婚してってすがってみたら?あなた、息子がいなくなったらここにいれないでしょうし。山崎もね?」
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