青空の下で
岬君へ
お祭りの夜はごめんなさい。
私、あの日は楽しくて、浮かれちゃって、由香ちゃん達に嫌な思いをさせてるなんて気づかなかったの。
言われるまで気づかなくて、そんな自分に腹が立った。
それで、岬君に八つ当たりしちゃいました。
本当は迎に来てくれたことも、鞄を持ってくれたことも嬉しかったのに、きちんとお礼すら言うことができなくて、あんな酷い事言ってごめんなさい。
私、サッカーの話もっと聞きたいです。
これからも岬君と話がしたいです。
勝手だけど、無視しないで欲しいです。
本当にごめんなさい。
原田 紗枝
お昼休みに学校へ戻って、岬君の下駄箱の中にこの手紙を入れた。
さっちゃんは「絶対許してくれるから大丈夫」って言うけど、私は不安でたまらなかった。
あんな手紙、いきなり書いて、余計に怒らせちゃったらどうしようって何度も考えた。
その度に、下駄箱の中の手紙を取りに行きたくなる。
あっという間に授業が終わり、岬君はすぐに教室を出て行った。
岬君の姿を見ると手紙のことを思い出して緊張する。
私とさっちゃんはダラダラと教科書を片付けて、美術室へ向かった。
「暑いとダラけるね~」
「そうだね。でも外部活よりはいいけどね」と言いながら窓の外を見たけど、サッカー部はいない。
「今日も先に帰ってて」
「わかった」
私は部活に来てもそれほどやることはない。
上級生は自分の作品にかかりっきりで、初心者の私への指導はしてくれない。
そろそろ帰ろうかな……
「さっちゃん、帰るね。頑張って」
「うん。また明日」
この時には、手紙のことなどすっかり忘れていた。