青空の下で
「天気悪いな」



「うん」



「本格的に降り出す前に帰ろう」



「うん」



自転車を並べ、私達は歩き出す。



学校じゃなければ、岬君の顔を見て普通に話せる。



やっぱり話題はサッカーのことで、話をする岬君は楽しそうで、私まで楽しくなる。



「そういえば、顔の痣どうしたの?」



「練習中にできた」



「大丈夫?」



「いつものことだから。この高校は凄いんだ。監督が有名で。そんな人に教えてもらえて、それだけでこの高校に来た意味がある」



私にはそんなふうに思える岬君のほうがすごいと思うよ。



「俺、サッカーでやれるところまで、やってみたいんだ。インターハイに出たい。そしてプロになりたい」



「うん」



「みんなはこんな田舎からプロなんて無理だって言うけど、俺は無理だなんて思ってない」



ここは私の村から比べるとひらけているけど、道内ではまだまだ田舎の部類で、こんな田舎で夢を語った所で鼻で笑われてしまう。



「うん」



でも、私は笑ったりなんかしない。



岬君の話があまりにも素敵で、私の目には沢山の涙がたまっていた。



真っ直ぐで、一生懸命で、素敵な夢を語る岬君。



私には痛いくらいに眩しかった。



いつもは長く感じる帰り道も、今日はあっという間に着いてしまい、家の近くの公園で岬君と別れた。



私は岬君の後姿が見えなくなるまでその背中を見つめていた。



明日は学校でも今日みたく話そう。



せっかく同じクラスなのに、挨拶だけなんてもったいない。



岬君との時間をもっともっと大切にしたい。



そして、岬君のことをもっともっと知りたくなった。

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