青空の下で
由香ちゃんは春樹君にベッタリくっついて、紀子ちゃんは岬君。



私達が少しでも近づくと2人は凄い顔をして私達を睨み付けた。



「春樹。あ~ん」



「由香ちゃん、優しい」



お調子者の春樹君はすっかり由香ちゃんのペース。



岬くんも紀子ちゃんに腕を絡められているのに抵抗しない。



「紗枝ちゃん……食べ終わった?」



「うん」



さっちゃんは暗い顔をして私の手を握り締めた。



「向こうに行かない?」



「いいよ」



私達はみんなから離れ、砂浜を歩いていく。



この街の海水浴場は白い砂浜。



寒い土地にはあり得ないんだけど、市の計画で今年から導入されたらしい。



私は始めての白い砂を噛み締めながら、さっちゃんと並んで歩く。



「ここ座ろうか」



私達は岩場のところに腰掛けた。



「ウチと春樹は幼馴染なんだ。家が近所で……」



さっちゃんは海を見つめながら、春樹君の事を話始めた。



「ウチ、4歳の時に引っ越してきたから、近所に友達がいなかったんだ」



「うん」



「女なのに背が高いって近所の男の子達にからかわれて、いっつも泣いていた。見えないでしょ?」



「今のさっちゃんからは想像できないかも」



「春樹の両親はウチが引っ越してくる少し前に離婚した。それで春樹の妹は父親に引き取られた」



「うん」



春樹君の家も離婚しているんだ……



私は波が行ったり来たり繰り返す水面を見つめながら、母親が出で行ったあの日を思い出していた。



「泣いてるウチを見て、春樹は妹とかぶったって言ってた。春樹はいつもウチの側にいてくれて、それが当たり前だった」



「うん」



「でもね。今日、由香ちゃんと仲良くしてる春樹を見て、春樹が離れていくって思ったの。そしたら……不安になった。春樹に側にいて欲しいと思った」



「さっちゃん。それって?」



「ウチ、春樹のこと好きなのかな?」



さっちゃんは目にいっぱい涙を溜めて私の方を見る。

< 60 / 88 >

この作品をシェア

pagetop