青空の下で
私は幼い頃から泳ぐのが大好きだったんだ。



この村にはスイミングスクールなんてものはなかったけど、道営プールでいつも泳ぎ方を習っていた。



小学校高学年になると大会みたいなものにも参加して、村では泳ぐのが一番速かった。



将来は水泳の選手になりたいっていうのが私の夢。



ブランコをこぎながら懐かしい夢を思い出していた。



でも、両親の離婚によってすべてが変わってしまったんだ。



……違うな。



きっと母親に捨てられたからだ。



片親でもいてくれたら私の夢は今でも夢として輝いていたかもしれないのに……



私の事をよく思っていない奥さんの入れ知恵なのかなんなのか、美和ちゃんは学校中で私の事を言い振らした。



“両親に捨てられて私の家の居候”


“男好きの母親は子供を捨てた”



そんな言葉の中で私は最後の小学校生活を送っていた。



そして、それは中学校になっても変わらない。



だって、小学校の同級生がそのまま中学生へとなるだけなのだから。



そんな中でも私の心の支えは泳ぐ事。



夢があったから歯を食いしばっていられたんだ。



水の中に入ると音って聞こえないと思ってる人が多いと思うけど違うんだよ。



そのプールによって違う音が聞こえてくる。



水しぶきや水の流れる音。



何かのモーターの音とか……



泳ぎながら鼻歌を歌えば、自分の声だって聞こえてくる。



唯一私が寂しくない空間。



私だけが知っているとっておきの場所が水中だったんだ。

< 66 / 88 >

この作品をシェア

pagetop