青空の下で
「紗枝ちゃん。おはよう」
「おはよう」
いつもと変わらない朝。
自転車置き場でさっちゃんと交わす挨拶は卒業するまで変わらないでいて欲しい。
「ねぇ。ちょっといい?」
私達はたわいもない話をしながら校舎へと向かっていると、目の前に由香ちゃんと紀子ちゃんが現れた。
「春樹と付き合ってるんだよね?」
さっちゃんを睨みつける由香ちゃんの髪の毛は黒髪に戻り、ウエーブも取れていた。
紀子ちゃんは海に行った日のまま……
「そうだけど何?」
さっちゃんは強い口調で返事を返す。
「春樹なんて最低な男だよ!!私知ってるんだから」
凄い剣幕の由香ちゃんに私は一歩後ずさりをしてしまうのに、さっちゃんはまったく怯まない。
「春樹の何を知ってるの?」
「海に行ったとき、私達を誘ったのは春樹だよ。あんたに嫉妬させたくてわざと私と仲良くしたんだって。私が春樹のこと好きなの知ってて、あんたの気持ちを引くためにそんな事までしたんだよ!!最低な男じゃん!!」
由香ちゃんの顔は真っ赤に色づき、その瞳は今にも涙を零してしまいそう。
「だから何?」
さっちゃんは変わらず強気の態度を崩さない。
「そんな男のどこが言いわけ?人の気持ちを傷つけて、そんな事までして付き合おうとするなんて馬鹿みたい。私がどんなに傷ついたか……」
下を向いてしまった由香ちゃんの背中を紀子ちゃんがそっと摩っている。