青空の下で

「由香ちゃんだけが傷ついたわけじゃない。ウチも春樹も沢山傷ついた。恋するってそういうことでしょ?誰も傷つかない恋なんてない。人を好きになったらどんなことしても手に入れたいってみんな思うんじゃないの?由香ちゃんは誰かを傷つけた事ないわけ?自分だけ被害しゃぶらないでよ!!」



さっちゃんが大きな声を出すと、由香ちゃんは顔を上げ「あんたに私の気持ちなんてわからない」とさっちゃんに掴みかかってきた。



「由香ちゃん。落ち着いて」



私は慌てて由香ちゃんをさっちゃんから引き離そうとしたけど、由香ちゃんは手を離そうとしない。



どうしていいのかわからずに、由香ちゃんの腕を掴んだままでいると「やめろ」ともう一つの手が私たちの方へと伸びてきた。



「春樹……」



その瞬間に手の力を緩める由香ちゃん。



「お前が怒る相手は幸子じゃねぇだろ?」



「……グスッ」



由香ちゃんは泣きながら走り去ってしまう。



私達は誰一人何も言えずに由香ちゃんの背中を見つめていた。



「ごめんね」



紀子ちゃんはそう一言言い残し、由香ちゃんの後を追う。



私には由香ちゃんの気持ちも痛いほどわかる。



由香ちゃんも真剣だったんだ。



誰かに怒りをぶつけないと耐えられないくらい、春樹君のことが好きでたまらなかったんだと思う。



どうして人は傷つかずに恋することができないんだろう?



どうして人は傷つけずに恋することができないんだろう。



それが例え人の痛みであったとしても、見ているだけで苦しいよ。



恋に傷ついた心は苦しすぎる。



「大丈夫か?」



春樹君は優しくさっちゃんの顔を覗き込む。



「ウチなら全然平気」



そう言って笑ったさっちゃんの顔は妙に大人びていた。



春樹君と付き合うようになって、さっちゃんが時折見せる仕草は、女の私でもときめいてしまうくらい女らしい。



「紗枝ちゃん少し話せる?」



「いいよ」



私達は学校をサボりいつもの公園に来ていた。



2人でサボるときは必ずここって決めているんだ。

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