箱庭の世界
これは私達の決まりごとみたいなもん。
深く干渉しない。
それさえ守れればいつまでも居ていいし、出ていきたくなったら勝手に出てけ。
彼はこの家の居候。
最高級マンションの最上階に位置するこの部屋はここのフロアにこの部屋しかないせいか無駄に広く、独り暮らしをするには贅沢過ぎるぐらいで。
実質、彼は一人でこのただっ広い部屋に住んでいることになる。
路地裏で餓死しそうになってた所を気紛れに助けてやれば何故か懐かれた。
怪我していたから適当に治療して治ったら出ていくかと思ったら出ていかない。
こいつがここに来てからもう半年は経つ。
この男はずっと居座るつもりらしい。
私達はお互い名前を知らない。
いや、もしかしたらこいつは知ってるかも。
初めて会ったときに『クロ』って名乗った気がする。
でもこいつも好きに呼べって言ってきたから私はこいつのことを『ポチ』って呼ぶことにした。
……私達はお互いに本名を知らない。