箱庭の世界


高層マンションの最上階から降りれば見知った顔が。

「…ショウ」

「お帰りなさいませ」

恭しく頭を垂れたこの男は私の専属秘書のショウ。

私のスケジュール管理から身の回りのお世話からなんでもこなす執事顔負けの完璧ボーイ。

ただ唯一料理が壊滅的に駄目なのが玉にきずだけど。

私とショウはロビーの前に停められていた黒塗りの高級車に乗り込み、車は静かに走り出す。

着いた先には大きな門が聳え立っている。

その門を躊躇無く開けて見れば辺り一面真っ黒の絨毯で覆われていた。

その正体は黒薔薇。

トルコから直送した天然の黒薔薇は日本の黒薔薇と違い、どこまでも漆黒で美しく咲き誇っている。

黒薔薇達の中央には真っ赤な水(本物の血液)を吹き出す噴水が設置されていて、いつ見ても幻想的だと思う。

ドーム型の屋根が美しい庭園を覆い隠し、ただただ広い庭園は常にライトアップされ、神秘的と共にここに居れば時間の感覚が狂ってしまう。

ここは私達の“お城”。

私達は“聖域”と呼んでる。

あの子達の眠る場所であり、私が守らねばならない場所。

そしてその奥にドーンと構えてる宮殿のような大豪邸が今の私達の住み処。

通称“神殿”だ。







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