カタブツ皇帝陛下は新妻への過保護がとまらない
「……え?」
リュディガーは手にした帽子をモニカの頭にかぶせると、いきなり彼女の身体を両腕に抱き上げてしまった。
「リュ、リュディガー殿下?」
あまりに驚いて、モニカは横抱きに抱えられたまま顔をひきつらせた。
「降ろしてください、あの……重たいですし、このままじゃ殿下の服まで汚してしまいますから……」
男性に、しかも皇太子殿下に抱き上げられるなどとんでもないと思い、モニカはしどろもどろに訴える。
するとリュディガーはわずかに眉根を寄せ、彼女の顔を見てから口を開いた。
「転んで怪我をして歩けないのだろう。城内まで運んでやるから、おとなしくしていなさい」
その言葉に、モニカはますます驚いてアンバーの瞳をまん丸くしてしまう。
「ど、どうして……」
人目を盗んで中庭に来たはずなのに、どうしてリュディガーはモニカが転んだことを知っているのか。ましてやそれを知ってどうして彼が助けに来てくれたのか、モニカにはまったくわからない。
城に向かって石畳の道を歩きながら、リュディガーは前を向いたまま喋り始めた。
「寝室の窓から外を眺めていたら、もやの中に青いリボンのハットが見えて、すぐあなただと気づいた。それが道の途中で急に動かなくなったから、おかしいと思って見に来たんだ」
彼の目を避けるため早朝を選んだはずだったのに、まったく意味がなかったことを知ってモニカは密かに呆然とする。
「ご心配かけてすみません……。あの、でも……わざわざ殿下が来られなくても、侍女に申しつけてくだされば……」
心配をさせたうえ、皇太子直々に運んでもらうなど畏れ多くて、モニカは萎縮せずにはいられない。なんだか気まずくて、抱かれた身体がソワソワする。
けれど彼はフゥッと短い溜息を吐くと、少しだけ口調を強くして言った。