オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
そこまで言うと向居は、真剣な表情で聞いている後輩にくだけた笑顔を向けた。


「ま、いつも言っていることだけどな。そのピックアップが難しい、ってことなんだろ」

「そうそう、そうなんですよーぉ」

「だよな。だから俺は、結局は根本に戻るんだと思うんだよ。旅行が好きっていう単純な気持ちに。好きって気持ちのもとで作られなかったものなんて、中身がないのと同じだ。そんなスカスカの商品なんかで旅行したって、なにも感じないだろ」

「はい」

「だからやっぱり必要なのは、旅行が好きって気持ち、これだと思う」


なるほどーと後輩ちゃんは感心しきっている。「やっぱり向居先輩ステキです」って目のキラキラも倍増だ。
「やっぱり向居はわかっているねぇ」なんて、リーダーまでうんうん頷いている。


馬鹿馬鹿しい。
ごもっともなことを言っているように聞こえるけど、結局は答えになってないじゃない。

好きって気持ちだけで紹介したホテルに客が満足してくれる? 観光地に行って、よかったって思ってもらえる?
そのために入念なリサーチが必要なんじゃない。つまり積み重ねよ。調べて、考えて、調べて調べまくる。

…だけど。

私は向居に勝てなかった。
< 11 / 273 >

この作品をシェア

pagetop