オプションは偽装交際！～大キライ同期とラブ・トラベル！？～

苛立ちがまた増してきて、この場にいるのも不快にしか感じなくなってきた。


「私、コーヒー買ってくるわ」


と、伝わるのかわからないような小さな声で告げると、私はオフィスから出ようとした。


「あともうひとつ必要なものについては、逢坂に訊いたほうがいいかもな」


が、不意に名前を呼ばれてぎょっと足が止まった。

見やると、向居、リーダー、後輩ちゃんの視線が私に集まっていた。
その三つの視線のうち、なぜだか私が合わせてしまったのは、凛とした光を放つ、黒い瞳―――向居だった。


ドキ、と心臓がはねた。


この男は、時折、こういう瞳で私を見つめてくる。
私の心の中を見透かすような、鋭い光を宿した瞳で。


「逢坂先輩の真骨頂…と言えば、徹底的なリサーチ力ですね！」

「そう。観光地からイベントやら店の人気メニューまで、逢坂のリサーチに及ぶものは社内でもそうそういないぞ。常に最新情報を求め行動しようとする探求心は、俺は逢坂が一番だと思う」

「はい、私も常々そう思っていました。きっと普段から努力されてたんだろうなぁ、って」